薬剤の分類「ATC分類」について

論文紹介

本カテゴリー「論文紹介」では管理者の独断と偏見と気まぐれで選んだ論文を解説します.

論文は図表の貼り付けや結果の細かな紹介はできませんが、最小限の結果(abstractで公開されている範囲)を引用する形で紹介していきます。また、図表もそのまま貼り付けることはせず、オリジナルのイメージ図に替えて掲載致します.

主旨としては管理者自らの疫学・統計学・臨床医学上の個人的解釈とし、Stataのコード紹介なども行っていきます.内容の詳細がご覧になりたい場合にはぜひ本文を正式に入手してください.

なお、内容の是非に踏み込んだコメントも致しますが、本ブログは情報提供だけを目的としたもので、医学的アドバイス(診断、治療、予防)の代わりになるものではありません。また診療目的でのアドバイスやご質問も受け付けておりませんので宜しくお願いいたします.

さて、本日はNew England Journal of Medicineから、精神疾患に身体疾患が合併しやすい事を示したgeneral populationのコホート研究から、傷病名および薬剤名のコードから併存疾患をどのように分類しているかについて解説します.取り扱う論文は、Momen NC, et al. Association between Mental Disorders and Subsequent Medical Conditions. (N Engl J Med. 2020 Apr 30;382(18):1721-1731)で、デンマークの590万の一般住民コホートのデータを使用しています.データの規模がとにかく大きい、最近話題のリアルワールドデータ解析というやつです.

論文の内容自体には触れません.データベース研究を行うにあたって使えるコードの組み合わせをご紹介することにフォーカスしたいと思います.

この論文の特徴として、とにかくAppendix (supplementary material)がとにかく膨大(343ページ!)であることが挙げられると思います.

そのAppendixの337ページに、身体疾患の分類項目として”Drug codes (ATC)“というのが載っています.これを中心に解説したいと思います.

1.ATC分類とは

ATCというのは、Anatomical Therapeutic Chemical Classification Systemの略で、解剖治療化学分類法と邦訳されていますが、医薬品統計法共同研究センター (Collaborating Centre for Drug Statistics Methodology) によって管理されている医薬品分類方法の1つになります.薬効、作用部位・化学的な特徴によって5段階までのレベルで分類されています.

参照URL: https://www.data-index.co.jp/knowledge/detail1-1.html

日本の薬剤分類方法は様々ありますが(YJコード、薬価基準収載医薬品コード、HOTコードなど)、それとこのATC分類を無料でマッピングするソースは、非常に残念ですが、2021年1月現在で存在しません.こんなものは本来無料で公開されて然るべきじゃないかと思うのですが…

5段階のレベル分けで一応薬剤の分類は一義的に決まるのですが、有料で入手可能な情報においてさえも、合剤がきっちり分類されていないなどの問題もあり、課題は山積です.今後リアルワールドデータの利活用を推進するのに足かせとならないように早いうちに整備が進むことを願うばかりです.

2.疾患名と薬剤分類

以下は論文からの抜粋になります.

疾患名ICD-10コードATC分類
高血圧I10-I13, I15C02, C03, C04, C07, C08, C09
高脂血症E78C10
虚血性心疾患I20-I25C01DA
心房細動I48
心不全I50
末梢動脈閉塞I70-74
脳卒中I60-64, I69
糖尿病E10-E14A10A, A10B
慢性呼吸器疾患J40-J47R03

このあたりを参考にして、ATC分類と既存薬との対応関係を調べてみるとよいでしょう.(ひょっとしたら院内の関係者が持っていて無償で使わせてもらえるかも知れませんが…)

3.RECORD声明、あるいはRECORD-PE声明

研究のために用いるために収集されたわけではない診療情報を用いた研究の報告において,論文の読者が研究の強みや弱みを正しく理解できるように何を論文中に記載するべきかといった基準を明確に示した、研究の報告基準である「The REporting of studies Conducted using Observational Routinely collected health Data(RECORD)」というものがあります.

ここでは、以下の様な記載があります.邦訳したものを引用すると、

RECORD7.1:曝露,アウトカム,交絡因子,効果修飾因子を分類するために用いたコードやアルゴリズムの完全なリストを提供するべきである.もしこれらが報告できない場合は,説明をするべきである.

奥山ら. 日々の診療情報を用いた研究報告の質向上への提案−RECORD:The REporting of studies Conducted using
Observational Routinely-collected health Data(日々観察されて集められている診療情報を用いた研究の報告基準)
の日本語版について−より抜粋

つまり、このようなコードをしっかりと明示することが求められるということになります.

逆に言えば、どんなコードを用いたかを明示してくれるので、後の研究者にとっては再現がしやすいですし、似たようなデザインの研究を行いやすいというメリットがあります.

コメント

タイトルとURLをコピーしました